一部過激な描写が含まれています。お読みの際はご注意ください。
どうも、ありつむぎです。
今回は、2011年に立てられた2chの名作SS、勇者「魔王倒したし帰るか」を解説します。
ドラゴンクエストのように、魔法や魔物などが存在しており、死者蘇生が可能なファンタジーの世界を舞台にした物語です。
魔王を倒した勇者が王の城に帰還し、これまでの旅について語る様子が描かれた大ボリュームの創作です。検索してはいけない言葉に含まれています。
この記事では、そんな創作を所々端折りながらオチまで解説します。
なお、今回解説した物語の全文は以下のリンクから読むことができます。
https://sanblo.com/meisaku_yuusha/
さらに、小説家になろうの以下のリンクでも掲載されています。
https://ncode.syosetu.com/n3065fd/
はじまり
「王様チィーッス。勇者ですよーっと」
この物語は、そんな一言と共に勇者の男性が王の城に帰還する場面から始まります。
しかし、長い旅の影響もあってか、勇者の顔はひげで覆われており、装備している鎧はドロドロに汚れて悪臭を放っていました。
王様は、そんな勇者とは思えない見た目の男性を見て警戒するものの、勇者は「勇者の印」なるアイテムを見せてきたため、すぐに謝罪します。
そして王様は、悠々と葉巻をふかし始める勇者に対して、勇者の仲間である戦士の男性と魔法使いの女性、僧侶の女性はどこにいるのかと尋ねました。
すると、勇者はこう言ったのです。
「死んだよ。俺以外は全員」
魔物と勇者の仲間たち
その後、勇者は、自身は空腹だから仲間のことは食事をしながら話すと言い、王様は兵士たちに早急に宴の準備をするように命令します。
王様や兵士、姫様が見守る中、宴の場に用意された沢山の料理をガツガツと貪る勇者。
姫様は、そんな食べっぷりのある勇者に対して「あらあら。お食事は逃げませんわよ?」と言うのですが、勇者は「……んなこたねえよ」と意味深長な返答をしました。
それから、勇者は王様に促されるまま壇上に上がり、王様たちに、魔王を討伐するまでの冒険や仲間について語り始めます。
しかし、彼の口から語られるのは、血生臭くて壮絶な出来事の数々でした。
魔物
手始めに、勇者は冒険をしながら取ってきた食事について話すことにしました。
勇者によると、どうやら冒険中は「あばれイモムシ」「どくウサギ」という名称の魔物を食べていたとのこと。
具体的な魔物の造形は語られませんでしたが、双方ともに調理に手間がかかる上に味が悪く、積極的に口にしたいものではないそうです。
このようなものを食べなければならなかった理由は、人の手で作られた作物や家畜を入手出来なかったという、至って単純なものとなっています。
勇者たちは、魔王の城の近くの土地を長期にわたって冒険していました。
しかし、その土地には魔物の支配を受けずに人間が暮らす街や村がほとんどなかったため、まともな食糧が手に入りません。
なので、魔物を食べざるを得なかったそうです。
また、そんな土地に住む魔物は、人間のように感情を見せたり言葉を話したり、ある程度の知能を持っていたりしたとのこと。
なので、そういった魔物たちは、勇者に破れると必死に命乞いをしてきたのそうなのですが、勇者たちは、自分たちが生きるために命乞いを無視して魔物を殺し、調理して食べてきたそうです。
そんな話を聞いた王様たちは沈黙してしまいます。
そのため、勇者は話題を切り替えて、自分の仲間である戦士の男性、魔法使いの女性、僧侶の女性の3人について語ることにしました。
戦士
まず始めに語ったのは、一番初めに死亡した仲間の戦士の男性についてでした。
どうやら戦士は、勇者や魔法使い、僧侶のように魔法を使うことが出来ないことを後ろめたく思っていたそうで、積極的に体を張り、魔物たちと戦っていたとのこと。
また、よく冗談を言ったり豪快に笑ったりするほど心身ともに健康であり、勇者が今いる国の中で最も腕力のある人物だったそうです。
しかし、最期は自ら死を懇願し、勇者はその言葉に従って戦士を殺したのだとか。
この理由として、戦士が心を壊して再起不能に陥ったことがあります。
心が壊れた原因。それは体の傷を治癒するアイテム、回復薬です。
体を張って戦うことの多い戦士は肉体的なダメージを受けやすく、それゆえに高頻度で回復薬を使って早急に傷を治し続けていたとのこと。
そんな回復薬の中でも、戦士は、魔王の城の近辺に生えてる特殊な薬草を使って勇者たちが独自に製造したアイテム、超回復薬に頼り切っていたそうです。
超回復薬には、体の傷の快癒は当然のこと、ブチッと千切れた腕やスパッと切り落とされた足さえも再生させられる優れた性能があると言います。
使ってみたい気もしますが、この超回復薬を飲むと中毒が起こってしまうらしいです。
それに加えて、超回復薬の使用後は激しい高揚感を覚え、その1時間後には、半日に渡って体の筋肉が緩み、幻覚に苦しめられ、体中を虫が這っている感覚に襲われ続けるのだとか。
投稿者が昔聞いた、危険なあの薬を使った後の体験談や、市販薬のODをした後の体験談で語られた副作用に似ている気がします。
そして、戦士のこうした副作用を軽減するために、勇者たちは戦士に精神を落ち着ける魔法をかけたり、希釈した回復薬を飲ませ続けながら冒険を続けたとのこと。
しかし、そうしているうちに、戦士の心は崩壊してしまいます。
末期の戦士は、目をギョロギョロと動かしながら口を半開きにして、ぶつぶつと妄言を口にするようになったそうです。
また、勇者たちを魔物と勘違いして攻撃を試みて、正気に戻った時にその自己嫌悪によって、自身の頭を壁に何度も叩きつけるようにもなったとのこと。
そんな戦士は、魔王の直下の四天王の1体との激闘の後、片目と手足が欠落し、内臓をむき出しにした死ぬ寸前の状態で・・・
「殺してくれ」
と勇者たちに頼んできたそうです。
そのため、勇者は戦士を殺したとのことです。
魔法使い
次に、勇者は魔法使いの女性について話し始めます。
彼女は温室育ちで笑い方も上品だったようです。魔物を食べることになった際は強い嫌悪感を示し続けていたのだとか。
ただし、魔法の腕は優れており、大爆発を起こして辺り一帯を吹き飛ばしたり、巨大な炎を出して魔物を焼き尽くしたり、吹雪を呼んで攻撃することも出来たとのこと。
そんな魔法使いですが、恐らく戦士の後を追って自殺したのだろうと勇者は話しています。
というのも、魔法使いは戦士と相思相愛だったようで、戦士が「殺してくれ」と懇願した際は「あたしを置いて行かないでくれ」「約束したじゃないか」と泣き叫んでいたのだとか。
そして、戦士がこの世にいなくなってからというもの、魔法使いの様子は変貌してしまったそうです。
変貌後の魔法使いは、強力な毒や酸を呼び起こす魔法を魔物に使うようになったのだとか。
酸の魔法は、地面を溶かして大穴を空ける程強力で、この魔法を受けた魔物たちは全身をドロドロに溶かされながら悲鳴をあげ続けたとのこと。
勇者いわく、その悲鳴は今も自身の耳に残っていて離れないそうです。
また、ある程度の知能を有する魔物たちの集落に訪れた際は、その集落を滅ぼすために毒の魔法を使用して、辺り一帯を血の海と阿鼻叫喚の地獄へ変えたのです。
その際、魔法使いは悪魔的な表情でゲラゲラ笑い、魔物の死体を刃物で切り刻んでいたとのこと。
なお、魔法使いがこうした魔法を使うようになった理由は、戦士を失ったショックで世の中の全てを憎むようになったからだと勇者は予想しています。
ですが、そんなある日の夜、魔法使いは空一面に輝く星空を見たそうです。
その際、魔法使いは心の底から嬉しそうに大はしゃぎをして、様子を見に来た勇者と僧侶に・・・
「戦士にも見せたかったなー」
と笑顔で言ったのだとか。
そしてその次の日、魔法使いは勇者たちの前から姿を消したそうです。
勇者たちが作ったキャンプのすぐそばにある切り立った崖の前で。1枚の羊皮紙と愛用の杖を置いて忽然と。
魔法使いの遺体はおろか彼女の肉片さえも見ていないものの、勇者は魔法使いの生前の言動から、魔法使いは自殺したのだろうと考えています。
なお、羊皮紙と聞いた時に姫様は「それは魔法使いの遺書ではないか」と言い、その内容に興味を示し始めました。
そのため、勇者は「自分と僧侶は中身を見た」と話した上で、躊躇なく回収済みの羊皮紙を姫様に渡します。
しかし、中身を確認した姫様は、突然悲鳴をあげて苦しそうに咳き込み始めました。
というのも、この羊皮紙には形容しがたい不気味なイラストが血液で描かれていたのです。
具体的な内容こそ不明であるものの、姫様は
「酷い……こんなの……こんな絵、人の描けるものじゃない」
と言っています。勇者もその言葉に同意しています。
なお、現在は解除されているものの、かつてこの羊皮紙には呪いがかかっていたとのこと。
その呪いは、激闘を潜り抜けてきた勇者さえも意識が削られるほど凶悪な力を放っていたそうです。僧侶は初めてこの紙を見た時、ショックで気絶してしまったそうです。
こういったことから、この呪いを受けた弱い人間や動物は瞬く間に呪いに侵食されて死亡するだろうと勇者は言っています。
僧侶
次に、勇者は僧侶の女性の生前とその死について語りました。
どうやら、戦士と魔法使いを失った後、勇者と僧侶は超回復薬を飲みながら必死に魔王の城に向かったそうです。
しかし、その城の中で僧侶と別行動を取っている時、勇者は魔王の側近に自身が侵入したことがバレてしまい、急きょ戦ったとのこと。
何とか側近は倒しましたが、勇者は指のかけら程度の肉片を残した状態で死亡してしまったと言います。
その後、勇者の元に駆けつけた僧侶は、勇者を蘇生するために取り掛かったとのこと。
しかし、蘇生魔法は極めて難易度が高い上に、周囲の魔物に自分たちの存在がバレてしまうほど大きな結界を張る必要があるそうです。
また、死者を蘇生させるには、その死者の肉体のうち3分の2程度残っていなければ難しいため、通常ならば勇者を復活させることは不可能だったと言います。
ですが、僧侶は魔力を回復させるための薬を大量に飲みながら、自身の魔力だけを使い、かなり強引に勇者の蘇生を試みたそうです。
その結果、勇者は復活したものの、代償として僧侶の肉体は崩壊して・・・
「子供ぐらいの大きさの自立するピンクの肉」と形容される物体になり果ててしまったのだそうです。
勇者は、この時点で僧侶は死亡したと考えています。
「肉は肉。あいつと一緒にするな」
勇者は姫様に対してそう言っています。
なお、その肉塊は回復魔法をただひたすら使い続けながら、未知の方法で勇者にこう語りかけてきたそうです。
「食え」
その言葉に従い、勇者は肉を平らげて、常に回復魔法をかけられているほぼ無敵の状態を獲得し、魔王を打ち倒したとのことです。
僧侶の願いと考察
こうした話を終えた後、勇者は王様たちにこう言いました。
「勇者ってのはさ、人のために生きて、人の為に魔王を倒す人でしょ?」
続けて、自分は人のためではなく仲間のために戦っていたと言い、僧侶が死んだ瞬間戦う目的を失い、もはや自分は勇者ではなくなったと語ります。
その後、勇者は魔法使いが死亡した後、僧侶が口にしたという願い事を明かしました。
その願いは・・・
「もう二度と、勇者も、勇者の仲間も現れない世界にしてください」
というものでした。
この願いを聞いた勇者は確信しました。
僧侶は、人間から見た勇者と知性を持つ魔物から見た勇者の双方が絶対に誕生しない平和な世界を望んでいると。
しかしながら、この物語は争いは続くことが示唆されて終了してしまいます。
物語のオチには、次のようなやり取りがありました。
魔物の青年「魔王よ、何か言うことはあるか?」
「あー、二つほど」
魔物の青年「何だ」
「俺は失敗した。次は……お前の番だ」
https://sanblo.com/meisaku_yuusha/2/
このようなやり取りから、勇者は魔物の青年にとっての魔王となり、勇者である魔物の青年は魔王になる。
そして、その後は人間の勇者の青年が・・・
といったようにループするのではないかと考察できます。
最後に
内容は以上です。
この物語が作られた後、生前の僧侶によって書かれた冒険譚「僧侶の手記」が公開されました。
それについては以下のリンクで紹介しています。
今回はこの辺で。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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