一部過激な描写が含まれています。お読みの際はご注意ください。
どうも、ありつむぎです。
今回は、2011年に公開された2chの名作SS、勇者「魔王倒したし帰るか」の後に公開された作品僧侶の手記を取り上げていきます。
これは、かつて勇者の仲間だった生前の僧侶の女性の語り口で、当時の勇者たちの冒険の様子が生々しく書かれている作品です。
ドラゴンクエストのように、魔法や魔物などが存在しており、死者蘇生が可能なファンタジーの世界が舞台となっています。
現在は以下のリンクから読むことができます。
https://ncode.syosetu.com/n3065fd/7/
その内容は非常に長いため、ここでは所々端折りながら解説してきます。
終盤では僧侶の手記について簡単に考察します。
過去作の、勇者「魔王倒したし帰るか」の解説は以下のリンクからどうぞ。
はじまり
ある日のこと。
僧侶の女性は勇者の男性に「一緒に冒険に行こう」と誘われました。
嬉しさと冒険の旅の怖さを一度に感じた僧侶ですが、その誘いに乗り、旅立ちの初日に勇者と自身の幼馴染である戦士の男性と魔法使いの女性と顔を合わせます。
そして、冒険が始まってから数日が経過しましたが、この当時の魔法使いとは気まずい関係を続けていたそうです。
というのも、どうやら僧侶と魔法使いは勇者に恋しており、互いにそれを知っていたそうです。
そのため、過去に僧侶は魔法使いを勇者の恋人にするために、魔法使いは僧侶を勇者の恋人にするために互いに身を引いたとのこと。
そして、冒険の最中に魔法使いと2人きりになった時、僧侶は魔法使いにその複雑な事情を指摘されました。
その際、僧侶は心の中でこう呟いています。
ごめんね、魔法使い、勇者。
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こうして、僧侶と魔法使いの不穏な仲は解消されました。
度重なる問題
次に、勇者たちはある問題に直面します。
それは飲食物についてでした。
僧侶によると、次の村に行くためには数日かかるものの、どのように考えても所有している飲食物はその分の量がなかったとのこと。
前の村に戻るためにも数日はかかるため、致し方なく魔物を殺して捕食することにしました。
牛に似た魔物と蛇に似た魔物だったそうです。
その魔物の血で喉を潤して肉で腹を満たしたものの、蛇に似た魔物には毒があったらしく、全員がそれによる吐き気で苦しめられました。
魔法使いについては衰弱が激しく、食べたものを全て吐き出してしまいます。
それから、勇者たちはとある貧しい村に辿り着き、歓迎されていない状況の中で、村長にお金や道具を渡して一晩だけ滞在を許可してもらいました。
村を出た後は、途中で見つけた小さな泉で水を補給して遠くの街に向かいます。全員が魔物の肉の味に慣れたこともあり、メンバーに精神的な余裕が出てきました。
ところが、勇者たちは向かった先の街に入ることを断られてしまったため、勇者たちは口渇感と空腹感を覚えながら次に進むことを選択。
体にこびりついた魔物の血のにおいを漂わせながら進んでいる時、限界に達した魔法使いが倒れてしまいました。
そして、勇者は魔法使いを背負って進み、その間に、城1つ買えるような金額で勇者たちに飲食物を提供しようとする醜い心を持つ商人の一団と出会いました。
この時、勇者たちは深く考えることなく確信しました。
こいつらは魔物だ。
勇者たちはこの商人の一団を殺害して、飲食物、馬車、地図を奪います。
この商人たちは人間だったのか?本当に人間に化けた魔物だったのか?
それについては不明です。
そして、地図を見ながら馬車に乗って近くの街に向かい、すぐ横で一旦野宿をした後、自分たちを商人の一団だと偽り、警備の兵へ僅かな金銭を与えて街に入って数日間宿に滞在します。
ところが、この時点で勇者たちの精神は限界に達していました。
勇者については謎の葉巻を吸い始めています。
一方で、この葉巻を吸うと健康被害を受けるらしく、興味を示した僧侶に対して吸ってはいけないとストップをかけました。
過酷な旅路
街に滞在している間、勇者たちは仕事をして金銭を稼ぐことを決めました。
勇者と戦士は、街の近くに根城を持つ盗賊団を捕縛する仕事を行い、魔法使いと僧侶は街の教会で蔵書の管理の手伝いをすることに。
その結果、勇者と戦士は「大したことはしていない」と言っていたものの多額の報酬が得られました。
盗賊団の首領以外は全員殺処分されて、後に首領も処刑されました。
その後、勇者たちは損傷の激しいミイラ化した死体が転がる乾燥地帯を進み、僅かな井戸水を奪い合って壊滅した村に向かいました。
そして、その村の家に入って宿泊することを決めて、罪悪感を覚えつつ、自分たちが生きるために村の中にある僅かな金銭をかき集めています。
次の日の朝。
勇者たちは、薬草を噛みながら生命線の水を少しずつ飲み続けて、王が収める小さい街を目指しました。
その際、僧侶はかつて襲われた魔物の攻撃の痛みを感じつつ移動しています。
この時、全員が疲労によって油断していたタイミングで魔物に襲われました。この魔物は勇者たちが殲滅しました。
しかし、この襲撃によって魔法使いが死亡してしまいました。
そして、次の街の教会に向かって魔法使いを魔法で蘇生することを決めます。
ですが、移動中も魔法使いの遺体は腐敗していき、無数のハエが集って目玉は眼窩から垂れ下がっていました。
結果として魔法使いは蘇生したものの、僧侶によると、蘇生される直前の魔法使いは以下のような行動を取っていたそうです。
手足を拘束器具で拘束されて、よだれと涙を流しながら必死にもがいていた。
醜悪な王と苦難
魔法使いが蘇生して、僧侶の日付の感覚が曖昧になっている頃、勇者たちは街の王に呼び出されました。
ここで命じられたのは近場の遺跡にいる魔物の殲滅でした。
その依頼はこなしたものの、人の言葉で許しを請う魔物の殲滅することは精神的な苦痛を伴う行為で、それを記す前に僧侶はこのように書いています。
あの日の事は明日にでもこの手帳に残そう。
吐き出さないと壊れてしまいそうだ。
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なお、この王は僧侶に劣情を抱いて僧侶を舐めるような目つきで見ており、僧侶はこの王に明確な嫌悪感を抱いています。
加えて、王は次の街を目指す勇者たちの行動に反対して、この街に留まり続けない限り罪人とみなすと言い始めたのです。
そのため、勇者たちは街から脱走して近くの国に隣接する村に向かって歩を進めます。
食糧難や毒性の高い魔物を食べたことによる体調不良などによって、戦士、魔法使い、僧侶が倒れます。
そして、唯一動ける勇者が村に行き、3人は山で見つけた小さな洞穴でその帰りを待つことになりました。
この時、3人は魔物に襲われて死亡して肉体の半分を失いました。
この世界では肉体の残り半分が残っていれば蘇生可能です。
しかし、蘇生される際は耐え難い苦痛を伴うとのこと。
僧侶はこの時について「思い出したくない」と断言しています。
そして、故郷で数日間の静養を経て、僧侶は家族に対して「ごめんなさい」と書いたメモ書きを残して旅を再開しました。
心優しい港町の女王
勇者たちは村で馬車を購入して港町に向かい、飲食物や装備品を買い込みました。
そして、僧侶とほぼ年齢が変わらない若い女王との謁見の後、数日の滞在を許されます。
その後、町の人々の噂から、この町と交易を行っている「海向こうの国」があることを聞き、次の目的地をその国に定めました。
ですが、その国に行くには旅費と船が必要であるため、勇者たちは、旅費が貯まるまでこの町の滞在を許してもらえないかと女王に尋ねます。
そして、女王はこのような提案をしました。
滞在期間は決まった時間に謁見を行う。謁見ではこれまでの旅の話を聞かせる。その代わりに旅費は支援する。
女王は、純粋に勇者たちの話を聞きたかったのです。邪な考えはありませんでした。
そして、勇者たちから、この冒険は飲食物に困る苦難の連続だったと聞かされると、しきりに頷いてメモを取り、時折涙を流しました。
旅立ちの日になって勇者たちが船に乗った時、僧侶は自身の荷物に女王からの手紙が紛れ込んでいたことに気が付きます。
この手紙の最後にはこう書かれていました。
「あなた達の旅に幸あれ」
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この手紙を書いた女王の過去は、同じ作者が小説家になろうに公開した彼女の記憶という短編に書かれています。
https://ncode.syosetu.com/n3065fd/48/
傍若無人な王と醜悪な人々
次の街までの旅が始まりました。
その際、勇者たちは、野盗によって破壊された他人の馬車を発見して、敵は魔物だけではないと確信し、自分たちを襲撃してきたクワやカマを手にした野盗を殺害しています。
また、この街に到着した際、港町の女王から受け取っていた紹介状を手渡したものの、不思議なことに「女王を騙した」として投獄されて尋問を受けることに。
そして、この街の王は怒り狂いながら4人を責め立てて、王族への詐称と戦争幇助の罪で死罪が言い渡されました。
ですが、後にこの街に魔物が攻め込んできました。
そして、対応できる兵士が足りないという理由で勇者たちは手助けを求められます。
勇者たちは、回復魔法や薬で手当てをされながら魔物を撃退して、手のひらを反すように罪人から英雄として扱われ始めました。
なお、勇者たちを投獄した傍若無人な王は一足早く逃亡して、道中で魔物の餌になったそうです。
その街を出た勇者一行は、知能のレベルが人間と同じで言葉を喋ることが可能な魔物の肉を食べて、睡眠中に悪夢をみて、自分の叫び声で目を覚ます地獄のような旅を続けていました。
さらに、大雨や大雪によって体力を奪われて一度4人は全滅して、その間際に、僧侶は「蘇生をしていただければ必ず謝礼をお渡し致します。」と書いたメモを残しました。
その結果、街を守る衛兵の1人が勇者たちを見つけて魔法の国に連れていき、その国の教会が4人を蘇生させました。
その後、蘇生による大金の支払いを命じられて、勇者が単独で自国へ向かい、支払いの援助を自国に求めました。
その間に残りの3人は身柄を拘束されました。
ところが、支払いの援助を受けられなかったのです。
そして、冒険終了後に僧侶と魔法使いの2人の身柄を魔法の国に引き渡すことが決まってしまいました。
この時、僧侶は「私たちなど物でしかない」と考えています。
英雄の国と結末
このような旅をして次の国に向かう際、僧侶は勇者が吸っていた葉巻をそっと手渡されました。
そして、それを吸った時に高揚感が得られて、手記に以下のようなことを書いています。
黄色の道具が 空を飛んでいたから、魔 物と勇者が踊ってる。
く るくる
踊って歌 を歌お う。
た のしいな ぁ
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元々しっかりとした文章が書けていた僧侶でしたが、このように狂い始めました。
そして、頭の重さと倦怠感を覚えながら記憶力にも支障をきたすようになります。
ですが、その後はいつもの僧侶に戻り、その後、英雄の国からの使いを名乗る一団が現れて、共に魔物を撃退して打ち解けます。
そして、この国の気さくな王とのやり取りを経て、勇者たちは英雄の国を後にしました。
結末に入ります。
本来ならば、これ以降もページは続いていたものの、血液などによる汚れによって最終ページ以外解読不可能となっています。
そして、最終ページにはこのようなことが書かれていました。
親愛なるあなたへ。
本当は、こうするべきじゃないのかもしれない。あなたに恨まれるのかもしれない。
でも、あなたが必死になって残してくれた薬指は、きっと私がこうする為のものだと思うから。
ごめんね、あなただけ残してしまって。
ごめんね、あなただけに背負わせて。
ごめんね、大好きだよ。
もし、私たちを知らない誰かが片手だけでいいから、片方の手のひらの指五本分だけでもいいから、あなたの手を取ってくれたのなら、どうか許してあげてください。
きっと世界は、人は、そこまで愚かでも傲慢でもないから。
もうそんな資格はないけれど、それでも最後に、神様にお祈りしようと思います。
ずっといっしょにいれますように。
またね。
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この内容は、以下の勇者「魔王倒したし帰るか」の終盤の展開に関連しています。
考察
僧侶の手記で見られる勇者が吸っていた葉巻。
ここには書かなかったものの、勇者は終盤まで僧侶に吸わせないように気を配っていました。
そして、終盤に僧侶が吸った際に高揚感が得られて思考が支離滅裂になったことから、タバコの類ではなく、危険な薬関連の物ではないかと考えられます。
また、最終ページの内容は僧侶が抱いていた勇者に対する愛であり、ネタバレになってしまいますが、勇者「魔王倒したし帰るか」において、最終的に僧侶はピンク色の肉塊になってしまいます。
そして、その肉塊は未知の方法で勇者に自信を平らげるよう指示して、それによって勇者は魔王を平然と倒す力を取得しました。
勇者は、僧侶と肉塊は別物と考えています。
しかし、この肉塊は元々僧侶本人でした。
そのため、捉え方は人それぞれだと思いますが、最終ページで見られた「ずっといっしょにいれますように」という僧侶の思いは叶ったとも考えられます。
また、より多くの人々が勇者たちに協力的であればこのような出来事は起こらなかったとも想像できます。

なお、僧侶の手記のはじまりの一番上には禁書第2491号というタイトルのページがあるのですが、これは、恐らく作者がSCPの報告書を模して書いたものだと思います。
内容を見てみると、一部伏字が使用されており、ある呪いによって多くの人が死亡したと書かれています。
呪いの詳細は不明ですが、勇者「魔王倒したし帰るか」で公開された、魔法使いが残した絵に込められた呪いだと投稿者は考えています。
最後に
内容は以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
この記事を拡散していただけると嬉しく思います。
また、Brave(ブレイブ)をご利用の方は無理のない範囲でBATをいただけると幸いです。