※この記事には、幻滅する表現及び気分を害する恐れのある内容が含まれています。お読みの際はご注意ください。
どうも、ありつむぎです。
今回は知らない方が幸せだったかもしれない本当は怖い海外の童話を4作品取り上げていきます。
昔話やおとぎ話とも表現されることがある作品です。シンデレラや赤ずきんなどの有名どころを揃えました。
この記事では、要所要所が改変された全年齢対象かつ子供向けのバージョンと比較しつつ、少々血生臭い原作などについて書いていきたいと思います。
シンデレラ
最初に取り上げるのはシンデレラです。子供向けの話は以下の通りです。
子供向けの話の流れ(あらすじ)
ある国に、シンデレラという美しい少女がいました。
この少女は、幼い頃に母親を亡くして父親と2人で気ままかつ何不自由ない生活を送っていたのですが、ある日、その父親が再婚することになりました。
その再婚相手である継母は醜悪な性格の持ち主で、それに負けず劣らずの性格をしている、シンデレラの義理の姉になる2人の娘も連れていました。その後、父親は不幸にも落馬して死亡してしまいます。
それから、シンデレラはそんな継母や姉から散々な仕打ちを受け、毎日のように大量の家事を押し付けられながら藁のベッドで眠る毎日を送り続けていました。
そんなある日、国の王城において王子の婚約者を決める舞踏会が開催されました。
継母は姉たちと共に当然のごとく参加して、舞踏会に行きたいと切望するシンデレラには留守番を強いました。
その後、嘆くシンデレラの元に突然妖精が現れて、夜の12時には戻るようにと言い、きれいなドレス、ガラスの靴、カボチャの馬車を与えます。
それから、シンデレラは王子に一目ぼれされて共に踊り、魔法が解ける前に一目散に城から出ていきました。ですが、この時履いていた靴の片方を落としており、それを拾い上げた王子は、この靴を履いていた女性を自身の婚約者にしようと決めました。
後日、王の使いの者が、落とした靴を持ってシンデレラの継母の家に訪れました。そして、2人の姉は王子の花嫁になるために靴を履こうと必死になったものの、当然ながら入りません。
その次に、シンデレラが靴を試したところ見事に足に収まったため、シンデレラは王子と婚約を果たし、国中の人々から祝福を受けたのでした。
姉たちも心を入れ替えて祝福したとのことです。
本当は怖いシンデレラ
まず、シンデレラでお馴染みのガラスの靴とカボチャの馬車。
これらの要素を取り入れたのは、1628年に生まれて1703年に没したフランスの文学者のシャルル・ペローであると言われています。
ペローは、原作となる様々な民間伝承を詩の形にしたり教訓を加えたり、当時の風俗を取り入れたりして編集し、童話集を出版していた人物です。
ただし、ペローの童話を再編成し、後に発表されたグリム童話のシンデレラでは以下のような点が異なっています。
- カボチャの馬車やガラスの靴は登場しない。
- 妖精や魔法使いは登場しない。
- 夜12時に魔法が解ける話は存在しない。
- 絹の靴、金の靴、小鳥、人語を話す白いハトなどが登場する。
さらに、シンデレラはアッシェンプッテルもしくはアシェンプテルと翻訳されることがあります。これは、シンデレラという言葉をドイツ語に翻訳したからです。この言葉は灰かぶりを意味します。
ただし、分かりやすさを重視して、ここではシンデレラという表記で統一させていただきます。
この作品においても、継母の性格は醜悪で、その2人の娘であるシンデレラの義理の姉達も同様でした。シンデレラを執拗にいじめて喜ぶ外道として描かれています。
グリム童話版のシンデレラの作中には、シンデレラの父親が義理の姉の2人とシンデレラに対し、これから出掛ける祭りの帰り道で買ってきてほしい土産物を尋ねるシーンがあります。
この時、一番上の姉はきれいなドレス、下の姉はしんじゅと宝石をねだりました。
その一方で、シンデレラは謙虚にも祭りからの帰り道に父親の帽子に引っかかった小枝で構わないと言います。
そして、その小枝を実の母親の墓のそばに植えたところ、その小枝は樹木になって小鳥が棲みつきました。
ちなみに、グリム童話のシンデレラにおける舞踏会は3日間行われています。
舞踏会に参加したいがドレスも靴もない。
そう嘆くシンデレラに対し、小鳥たちは舞踏会の1日目と2日目にきらびやかなドレスや絹の靴を与えました。
カボチャの馬車はないため、舞踏会の会場には徒歩で向かっています。
シンデレラは、後の婚約者となる王子とひとしきり踊ってから走って帰宅して、樹木の前でドレスを脱ぎ、何事もなかったかのようにふるまいました。このドレスは小鳥たちが回収していたようです。
そして、3日目にシンデレラはドレスと金の靴を受け取っています。
しかし、この日の舞踏会の会場の去り際に、はいていた片方の金の靴が脱げてしまいます。
王子は金の靴を拾い上げ、この靴をはいていた女性を婚約者として迎え入れたいと心から思うようになりました。
そして、次の日の朝。
王子は、靴を持ってシンデレラたちの家に訪れると、靴に合う足のサイズの女性を探していると説明します。さらに、その女性を結婚相手にすることも明かしています。
王子の花嫁になれば、生活水準や地位が向上することは明らかでしょう。
そんな欲に突き動かされるように、手始めに一番上の姉が試してみたものの、足の親指が邪魔で靴をはくことができませんでした。
すると、継母は一番上の姉に刃物を手渡しながら・・・
足の親指を切り落とせ。
といった旨の命令をします。王子の婚約者になれば親指の1つや2つなんてどうとでもなり、歩く必要もなくなるといった意味のことも話しています。
そのため、自身の足の親指を切り落として、大量の血液を流しながら強引に足を靴に押し込んだのです。
王子は、この姉が自身の花嫁候補だと勘違いして馬に乗せて城に向かいました。
しかし、ここで言葉を話せる2羽の白いハトが現れて「こいつは本当の嫁ではない」といった警告しました。それを聞いた王子は騙されたことに気が付いて家に送り返します。
2番目の姉の番が回ってきましたが、かかとが邪魔をして靴をはくことができません。
それを見た継母は同じく刃物を手渡して・・・
かかとを刃物で切り落とせ。
といった命令をします。その命令に従ってかかとを切り落とし、靴をはきました。
ただし、かかとを削る、継母が力ずくで足を靴に捻じ込むと表現している書籍もあります。
刃物で切り落とす。削る。力ずくで捻じ込む。
いずれにしても足から血が溢れて靴は血まみれになりました。はいていた白い靴下も赤く染まりました。
王子は、自分が探している女性はこの人なのだろうとまたもや勘違いし、馬に乗せて城に向かいます。ですが、先ほどのハトたちの「こいつも違う」といった警告を聞いたため引き返し、家に送り返しました。
今度はようやくシンデレラの番が回ってきて、靴を履いてみるとぴったり収まりました。
こうして、シンデレラは晴れて王子の婚約者になりました。
なお、姉たちはこの結婚式に参加しています。
ただし、シンデレラや王子を良心で祝福する描写は一切ありません。
心も入れ替えていません。幸せにあやかるためだけに参加しています。
そして、シンデレラと王子が愛を誓い合って教会に向かった際、一番上の姉は右側に、2番目の姉は左側に立っていました。
そんな時、かつて王子に警告していたあの時の2羽の白いハトが現れました。そして、それぞれ2人の姉に接近すると・・・
片方の目をくちばしで引きずり出しました。
シンデレラと王子が教会から出てきた後は・・・
2人のもう片方の目玉をくちばしで引っ張り出しています。
こうして、2人は靴の一件で足に大怪我を負った上に、完全に目が見えなくなりました。
眼球を奪われて視力を失ったことは、これまでシンデレラをいじめ続けたことへの報いだと言えるのかもしれません。
イタリア版のシンデレラ
灰かぶり猫もしくはキャット・シンデレラと呼ばれる作品もあります。
これは、17世紀のイタリアの詩人ジャンバティスタ・バジーレによって書かれたイタリア版のシンデレラです。
この作品では、シンデレラにあたるゼゾーラもしくはゼゾッラと呼ばれる少女が登場します。そして、彼女は家庭教師の女性に対し、父親の再婚相手の継母のいじめで苦しんでいることを打ち明けています。
それを聞いたこの女性は継母の殺害を提案しました。
蓋つきの衣装箱から衣服を取り出してほしいと継母に頼み、衣装箱に頭を入れた時に蓋を勢いよく閉めて首をへし折り殺害するという方法でした。
そして、シンデレラはその提案通りの手順で継母をあの世送りにして、後に父親はこの家庭教師の女性と再婚するのでした。
赤ずきん
次は赤ずきんです。子供向けの話は以下の通りです。
子供向けの話の流れ(あらすじ)
とある村に、無名のかわいい少女が住んでいました。
この少女は、おばあさんが作ってくれた赤いずきんを気に入って常にかぶっていたため、いつしか村人たちからは赤ずきんと呼ばれるようになります。
そんなある日、おばあさんが病気を患って寝込んでしまいます。おばあさんは森の奥の家の中で1人暮らしをしていました。
そこで、赤ずきんの母親は、赤ずきんにぶどう酒とパンの入ったカゴを手渡しながら言いました。
「知らない人には絶対についていってはだめよ。寄り道もしないでね」
それから、赤ずきんが1人で森の奥を進んでいると、どこからともなくオオカミが現れてこれからどこに行くのか尋ねてきます。
ここで赤ずきんは、自身のおばあさんの家に行くことを伝えると、オオカミはおばあさんと赤ずきんを食ってしまいたいと思うようになりました。
そのため、赤ずきんが寄り道をしている間におばあさんの家に行って玄関ドアを開けさせると咀嚼せずに吞み込み、オオカミはおばあさんに扮してベッドで横になりました。
それから、家を訪れた赤ずきんに耳や目玉が大きいことを指摘され、適当に受け流していたものの、口を言及された途端、赤ずきんを丸呑みにして、満足そうに睡眠をとり始めました。
ですが、通りかかった猟師が、おばあさんの家のドアが開いていることに違和感を覚え、内部で大きく膨らんだ腹を持つオオカミを発見します。
その腹を取り出したハサミで裁断し、中に入っていた赤ずきんとおばあさんを救出しました。
その後、2人は幸せに暮らしたそうです。
オオカミのことも許したそうです。
本当は怖い赤ずきん
当然ながら、本当の赤ずきんはこんな生易しい話ではありません。
これは全年齢対象の現代版で、実際にはグリム童話とペロー童話、そしてペローが再編成する前の赤ずきんのモチーフになった原作があります。
以下よりグリム童話版→ペロー童話版→原作の順番に紹介していきます。
グリム童話版の物語は比較的穏やかですが、ペロー童話版と原作は少々怖いかもしれません。
グリム童話版
まずは、グリム童話版についてです。
グリム童話版の序盤から中盤の物語の流れは、先ほど話した現代版の作品とほぼ同様です。ただし、おばあさんの家に持って行くものはワインとケーキに変更されています。
猟師はドアが開いていることではなく、オオカミの耳障りないびきに違和感を覚えて家にあがり込んでいます。猟師ではなく狩人と表記されることもあります。
救出された赤ずきんは、自身を丸呑みにした仕返しとして、オオカミの腹部に巨大な石を捻じ込みました。
その石の影響でオオカミは息絶えて、それを見た赤ずきん、おばあさん、猟師の3人はひとしきり喜び合いました。猟師はオオカミの皮を剥ぎ、おばあさんは赤ずきんが持ってきたケーキとワインを口にしています。
ただし、オオカミが水を飲もうと池に近づいた途端、バランスを崩して池に沈んで死亡するという展開もあります。2人の救出前に銃で撃ち殺されるパターンもあるようです。
また、後日談としてこんな話もあります。
赤ずきんが、かごの中にケーキを入れておばあさんの家に向かっていた時のこと。
無残に死亡したあのオオカミを知ってか知らずか、2匹目のオオカミが現れて、赤ずきんとおばあさんを食って腹を満たすために、声をかけながらにじり寄ってきました。
赤ずきんは、過去にオオカミに襲われたことがあるため、オオカミのことを無視して歩き続け、おばあさんの家に到着してドアの鍵を閉めます。
それから、オオカミはおばあさんの家に侵入しようと家の周りをうろうろと動き回り、屋根にのぼりました。
ですが、赤ずきんはオオカミがすぐ近くにいることをおばあさんに知らせてありました。
そこで、おばあさんは用意しておいたソーセージを煮込んだ残り湯を容器になみなみ注ぎ、その容器を床に設置するよう赤ずきんに指示します。
すると、オオカミはその匂いにつられて屋根から転落し、それと同時に容器内の湯の中に頭を突っ込んで溺死しました。
それ以来、赤ずきんとおばあさんを狙うオオカミは1匹も現れなかったそうです。
ペロー童話版
ペロー童話版は、グリム童話版が発表される前に作られたものとなっています。
この童話の展開の大部分はグリム童話版とほぼ変わりなく、オオカミに用心しなさいという教訓も共通しています。
しかし、終盤のみ異なります。
現代版やグリム童話版の赤ずきんで見られた猟師に助けられるシーンは存在しません。
誰も助けてくれません。
赤ずきんとおばあさんは丸呑みにされてオオカミだけが得をして物語が終了するというバッドエンドを迎えることになります。
したがって、ソーセージを煮込んだ湯で2匹目のオオカミを殺すという後日談もありません。
赤ずきんの原作
ペローが編成した赤ずきんの原作は、スウェーデンやフランスに伝わる民話だとされています。
ただし、この民話に登場するのは特徴のないただの少女です。赤いずきんをかぶる要素ができたのはペロー童話版からです。
この少女は、森の奥深くに住むおばあさんの家にパンとミルクを届けに行こうとしていました。
そして、お馴染みの喋るオオカミも登場するのですが、少女はこのオオカミに警戒心を抱くことなく、これからの予定を流暢に喋ってしまいます。
そして、オオカミは少女から聞いた話を元に家を特定して先回りしておばあさんを惨殺しました。
それを終えると、オオカミはおばあさんの服を着てベッドで横になり少女の到着を待ちます。
そして、少女におばあさんの血肉を食べさせました。
少女が到着すると、オオカミは素性を隠したまま服を脱いでベッドに入っておいでと誘います。
少女は言われるままに裸になってベッドに入りました。
そして、耳、目、口の大きさに関するお馴染みの問答が行われて、口について聞かれた時、オオカミは「おまえを食べるためさ」と言ったのですが、ここで機転を利かせて、少女は裸の状態で間一髪のところで逃げ出しています。
この原作となる民話がペローによって再編成され、それがグリム版に改編された。そして、その話を元に現代版の赤ずきんが誕生したのです。
原作→ペロー童話版→グリム童話版→現代版
といった流れで変化していきました。
なお、現代では誰も死なない展開の赤ずきんが望まれるようにもなったようです。
余談
赤ずきんの物語には様々な捉え方があります。
まず、警戒心を持ちつつ言いつけを守らないと憂き目に遭うという教訓を伝えるために書かれたというもの。
作中において、赤ずきんは出かける前に母親から寄り道をしてはいけないと聞かされていました。ですが、それを忘れてオオカミにこれから行く場所を教えつつ寄り道をした結果、おばあさんの家を知られた上に丸呑みにされてしまいました。
オオカミに話しかけられた際、何も喋ることなく真っすぐおばあさんの家に向かっていれば被害を受けることはなかったかもしれません。
ちなみに、オオカミは性欲をたぎらせた性犯罪者の隠喩であるとも言われています。
まず、赤ずきんの「赤」は性的な興奮を掻き立てる色とされており、それに加えて、「食べる」という様々な意味にとらえられる言葉が作中で見られます。
さらに、ペロー童話版の赤ずきんでは、オオカミのことをなぜかオオカミおじさんと表記しています。
原作のオオカミは、おばあさんを惨殺した後、少女に対して裸になってすぐ近くに来るよう命令しています。
そのため、原作や赤ずきんには、言いつけを守らない少女はオオカミのような男に性的な意味で食べられてしまうという教訓があると考えられるかもしれません。
また、この物語は赤ずきんとおばあさんを森に捨てる話だったという説もあります。
かつて森は、自然豊かであらゆる恵みをもたらす存在であると同時に、命を狙う猛獣が潜む危険な場所として知られていました。
一方で、赤ずきんの本編には、森の奥深くにおばあさんの家があることと、少女を1人で森に出向かせる描写があります。
こうしたことから、赤ずきんの物語は、飢饉に備えて人口を削減して少ない食料を確保するために、子供や老人を森に捨てることを意味しているとも言われています。
初めから、赤ずきんの母親は自身の娘とおばあさんを捨てるつもりだったのかもしれません。
白雪姫
次は白雪姫です。子供向けの話は以下の通りです。
子供向けの話の流れ(あらすじ)
大昔にあったどこかの国の話。
その国の王と王妃は、毎晩のように子供を授かりたいと願い続けていました。
そして念願の娘に恵まれます。その肌が雪のように白かったことから、白雪姫と名付けて大切に育てました。
それから、白雪姫は王と王妃の愛情を注がれながら黒髪を持つ美しい少女へと成長していったものの、妃が大病を患い逝去してしまいます。
そんなある日のこと。
王は、新たな再婚相手の女性を迎え入れました。
その王妃は、自身の美しさに誇りを持っていると同時に酔いしれており、所有物である部屋の魔法の鏡に向かって毎晩「鏡よ、鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」と尋ね続けました。
その鏡は、誰かの質問に対して正直に答える不思議な性質を持っており、この時は「お妃様、あなたでございます」と返答しています。
ですが、年月の経過に伴い白雪姫が立派な姫に成長した時のこと。
王妃が鏡にいつもの質問をした際、「それは白雪姫でございます」と鏡は言います。
それに怒りを覚えた妃は家来を呼び寄せると、白雪姫を殺して黒髪を刈り取り持ち帰ってこいと命令しました。
それから、家来は白雪姫を森の奥まで連れていき、そこで殺害を試みたのですが、良心から殺すことができず、白雪姫を遠くに逃がすことにします。
白雪姫が森の中を歩いていると、小さな家を見つけました。不用心にもドアは開いており、中にある家具も、人が使うにしてはどれも一回りも二回りも小さなものばかりでした。
不思議に思ったものの、歩き続けて疲れが限界に達しており、中に入ってそこにあるベッドにもたれかかると、そのまま睡眠をとり始めました。
実は、白雪姫が入った家は集団生活を営みながら宝石探しを生業にしている小人たちのもので、帰宅した妖精たちは白雪姫を見て驚きをあらわにします。
しかし、小人たちは心優しい性格をしており、白雪姫がこの家で暮らすことを承諾しました。そして、ここから妖精たちとの共同生活が始まります。
その一方で、王妃は白雪姫が死んだと思い込んでいました。手には黒髪と思しきものが握られていて、本人は全く気が付かなったものの、実際はただの馬のしっぽの束でした。
そして、例の鏡に同じ質問をしましたが、白雪姫はまだ生きており、森の奥の小さな家に住み続けていることを鏡に聞かされます。
そこで、王妃は何としてでも白雪姫の息の根を止めたいと思い、変装をした上で毒まみれのリンゴを用意します。
その後、小人たちが留守にしているタイミングを見計らって家に行き、足をくじいたから休ませてほしいと嘘を付いて上がり込むと、休ませてくれたお礼と称して1つのリンゴを与えました。
このリンゴは毒に塗れていたのですが、白雪姫は気が付かないまま食べてしまい、そのまま倒れてしまいます。王妃はそれを見て安心してその場から立ち去りました。
それと同時期に、白馬に乗ったある国の王子が道に迷っており、偶然見つけた白雪姫が住む家で雨宿りをさせてもらおうと上がり込みます。
そこには、死亡した白雪姫を見て嘆く小人たちがいて、白雪姫は目をつむったままベッドの上で仰向けになっていました。ですが、その頬や唇はまるで生きているかのようにつやがありました。
その後、ベッドの近くに落ちているリンゴを拾い上げると、王子はにおいだけで毒が塗布されていることを理解すると共に、何者かが与えたこのリンゴを食べたことが死因なのだろうと考えます。
王子はそんな白雪姫にキスするのですが、不思議なことにそのキスによって蘇り、王子と白雪姫は一瞬で相思相愛になります。
その後、王子は白雪姫を自国の城に連れて行き結婚式を挙げて、2人は末永く幸せに暮らしたそうです。
ちなみに、妃は生きていて白雪姫に許しを求めて、白雪姫は心の優しさから妃のこれまでの暴挙を許しました。
本当は怖い白雪姫(グリム童話版)
この子供向けの白雪姫の物語は、過激な表現が極限まで削り取られて要所要所が差し替えられた全年齢対象のものです。
グリム童話版では、この物語からはまず想像できないような壮絶な内容かつ読み手の夢が壊れるような展開が存在しています。
以下よりグリム童話版を掲載します。
まず、白雪姫と聞いて真っ先に思い浮かべるのは王子とのキスシーンだと思います。
ですが、グリム童話版においてそのシーンは一切存在しません。
キスシーンは、子供向けの白雪姫やディズニー映画の白雪姫にのみ登場する要素で、グリム童話版の白雪姫にはどこにもありません。
では、どうやって目を覚ますのか?それについては後ほど解説します。
グリム童話の初版の白雪姫の内容と子供向けと異なる点として、白雪姫と王妃は血のつながりがあったことが挙げられます。
即ち、グリム童話の初版の白雪姫では王妃と白雪姫は母親と娘の関係だったということです。
さらに、直接的な描写はないものの、7歳前後だった白雪姫は父親と肉体関係にあったことが作中で示唆されています。そして、王妃は娘に夫を奪われた嫉妬で狂っています。
それに加えて、実の娘の美貌にも嫉妬していて、狩人に命じて白雪姫を森に連れていき、こう命じました。
白雪姫を殺害した後は、解体してその肺と肝臓を取ってこい。
この内臓を塩ゆでにして食べようと考えていたようです。
ですが、白雪姫は狩人に命乞いをして逃がしてもらい、狩人は近くにいたイノシシを殺害して解体し、その肺と肝臓を持ち帰りました。
それから、王妃は白雪姫が死んだとすっかり信じ込んで喜び、その内臓を塩ゆでにして食べています。
そんな中、白雪姫は森の奥に進んでいきました。
そして、そこで出会ったのは7人の小人ではなく人殺しでした。
白雪姫は、この7人にかくまわれて暮らしていたものの、真実を話す鏡によって母親に自身が生きていることがばれてしまいます。
そして、母親は素性を隠してから合計3回白雪姫に接近して暗殺を試みました。
1回目は白雪姫を用意した腰ひもで縛って、2回目は毒を塗った櫛を頭に突き刺します。
1回目と2回目共に失敗したものの、3回目では毒リンゴを使いました。
これにより、ようやく白雪姫の殺害に成功しています。
その後、白雪姫の遺体は人殺したちによって透明なガラスの棺に入れられました。
ですが、ここで偶然にも王子が通りかかります。
王子は、白雪姫に一目ぼれして人殺したちからその遺体を棺ごともらい受けると、家来に命じて棺を運ばせました。
その際、棺のあまりの重さに疲労感を覚えた家来は、八つ当たりとして白雪姫の背中を乱暴に蹴り飛ばしました。
すると、その拍子にのどに詰まっていたリンゴが吐き出されます。
その結果、白雪姫は目を覚ましたのです。
王子のキスではなく、家来の八つ当たりが目を覚ますきっかけになったんです。
その後、王子と結婚することになった白雪姫。
王妃の最後についてですが、作品によって異なります。
その1つに、王妃は婚礼で招かれた際に白雪姫の姿を見て絶句して立ち尽くした後・・・
強引に焼けた鉄製の靴をはかされて死ぬまで躍らされた。
という結末があります。
白雪姫にも母親に対する復讐心はあり、いくら謝罪されても許さないと考えることが自然でしょう。
また、自身が毒リンゴを食わせたにも関わらず、白雪姫が息を吹き返したことを知った王妃が怒り狂って死亡するというパターンや、招かれた婚礼の花嫁が白雪姫だと知ってショック死するパターンもあります。
さらに、白雪姫の生存を魔法の鏡に聞かされた怒りで鏡を叩き割り、その破片が心臓に刺さって致命傷を負う場合や、雷に打たれて崖から落ちる場合もあります。
ちなみに、白雪姫の王妃は第2版から実母ではなく継母に変更されて、人殺しは小人に変更されました。
それに伴い、版や作品によって、毒リンゴを食べた白雪姫を抱えた王子や家来が転んだ拍子に、白雪姫がリンゴを吐き出すといったように、息を吹き返す経緯に変化が生じました。
また、小人たちが継母を崖から突き落とす要素も見られるようになりました。
ですが、現代では残酷な部分が大幅に削り取られて、0歳の子供にも読み聞かせることが可能なソフトな結末も用意されました。
ラプンツェル
最後はラプンツェルです。子供向けの話は以下の通りです。
子供向けの話の流れ(あらすじ)
大昔にあったどこかの国の話。
ある1組の夫婦の間にラプンツェルという娘が生まれました。
その時、恐ろしい魔女が現れて、この娘を大変気に入ります。
そこで、自身が持っていた野菜を夫婦に押し付けると、この娘を強引に奪い取りました。
魔女は、その娘にラプンツェルという名前を付けると、森の中にある高い塔の中に幽閉しました。
それから長い時間を経て、ラプンツェルは非常に美しい美貌と長い金色の髪を持つ少女に育ちました。
しかし、ラプンツェルは毎日孤独感を覚えており、その悲しみを紛らわせるために美しい声で歌を歌い続けました。
その歌声を聞いた国の王子は、この歌声を大変気に入って、直接ラプンツェルに会いたいと思い始めます。
そんな時、魔女が「ラプンツェル!おまえの髪をたらしておくれ!」と言って、地上に向かって降ろされたラプンツェルの長い髪の毛を掴んでよじ登り、塔の中に入っていく様子が見えました。
そのため、魔女がいないタイミングで王子も同じように呼びかけて、塔の中に入っていきました。
そして、王子は相思相愛になったラプンツェルの元に毎日会いに行ったのですが、魔女はこのことを知ると、ラプンツェルの長い髪をはさみで切断して塔の下に落としてしまいます。
しかし、そんなことを知らない王子は、魔女がたらしていたラプンツェルの髪を掴んで塔の中に入っていき、魔女に突き落とされて、その下にあったいばらで目を傷つけて視力を失います。
それから、ラプンツェルを求めてふらふらとさまよい続けた際、その耳にラプンツェルの歌声が聞こえてきました。
そして、この2人は再開して、王子の視力はラプンツェルの流した涙の不思議な力で蘇ります。
その後、2人は王子の国に帰って結婚式を挙げて幸せな毎日を送ったそうです。
本当は怖いラプンツェル(グリム童話版)
ここからが本題です。
子供向けのラプンツェルには、原作となるグリム童話版との相違点とカットされた要素が数点存在します。
子供向けの序盤には、魔女が突然現れて夫婦の娘を強奪した要素がありました。
ですが、グリム童話版では、ある男性が近くに住む魔女の畑からラプンツェルという品種の野菜を盗み、その野菜を妊娠中の妻に食べさせています。
男性は悪意があって盗んでいたのではなく、妻がラプンツェル以外の物を食べることができず、危篤状態に陥っていた事情があります。
そのため、男性は致し方なく魔女の畑からラプンツェルを盗んでいたということです。
それから、その盗みについて魔女に知られると、魔女は「好きなだけ野菜はやるが、生まれてくる子供を私によこせ」と言います。
男性は怖気づいてそれに応じてしまい、2人の間に娘が生まれると、夫婦は魔女にその娘を手渡しました。
そして、その娘は魔女によってラプンツェルと名付けられて、入り口のない塔に幽閉されたのです。
1組の夫婦が魔女の野菜を盗み食いした→魔女にばれる→「野菜はやるが生まれてくる子供を私によこせ」と魔女に言われる→夫婦は娘を魔女に手渡す。
これが子供向け作品とグリム童話版のラプンツェルの相違点です。
カットされた部分は、12歳になったラプンツェルが行った王子と魔女のやり取りについてです。
まず、王子がラプンツェルの髪を掴んで塔に入り相思相愛になった点は子供向け作品と共通しています。
しかし、グリム童話版では王子と行為に及んだことが示唆されています。
というのも、ラプンツェルが魔女との会話の中で「自分の服が身体にあわない」と言ったのです。
そのため、魔女はラプンツェルが秘密裏に男と関わりを持って妊娠していると察しました。
そして、ラプンツェルは魔女に髪を切り落とされて塔から追い出された後、男女の双子の赤ん坊を産み、物乞いのようなみすぼらしい生活を送り始めました。
その後、塔にのぼってきた王子も突き落とされます。
視力を失うことは子供向け作品と共通しています。
ですが、グリム童話版では落下の衝撃で両目が眼窩から抜け落ちたと表現されています。
なので、王子は足元に転がる自身の目玉を他所に、くぼんだ眼窩をむき出しにしたままふらふらとさまよい歩くことになりました。
さまよい歩いた挙句、王子は骸骨のようにやせ細ります。
- ラプンツェルは王子と行為に及んで妊娠して男女の双子を産んでいる。
- 王子の両目は落下の衝撃で眼窩から抜け落ちる。
- 王子はさまよい歩いて骸骨のようにやせ細る。
これが子供向け作品からカットされた部分です。
ただし、その数年後に王子はラプンツェルの歌声を耳にして再会しています。その再開の喜びによって流れたラプンツェルの涙が王子の眼窩に入りました。
それにより、驚くことに王子の眼球と視力が復活して、王子はラプンツェルとその子供たちを連れて国に帰り幸せに暮らしたそうです。
なお、グリム童話の初版では魔女ではなく妖精と表現されていますが、第2版以降のストーリーでは魔女と書き換えられています。
最後に
以上で解説を終了します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
この記事が面白いと思った方は、ぜひ拡散してください。
また、Brave(ブレイブ)をご利用の方は、無理のない範囲でBATをいただければ大変嬉しく思います。